女王陛下のメイド探偵ジェインシリーズ「バッキンガム宮殿の殺人」
C.C.ベニスン著/宮脇裕子訳
ハヤカワ文庫:ミステリアス・プレス文庫124
1998/05/31初版発行
女王陛下のプティアンジェ(違
エリザベス女王が求人広告
エリザベス女王に思いつきで結婚式の招待状を送ったら本当に来た
先日、英国王室関連のニュースが二つほどありました
どちらのニュースも日本人から見れば意外な内容ですが、このニュースを見てとある小説を思い出しました
それがこの「バッキンガム宮殿の殺人」です
舞台は1993年のイギリスのバッキンガム宮殿
女王陛下にとっては災厄の年だったその前年の社会情勢を受けて、限りなく忠実に再現されたバッキンガム宮殿とこれまた限りなく忠実に再現されたその宮殿の主である女王陛下、そしてその他大勢の架空の登場人物たちという、限りなくノンフィクションに近いフィクション? といった感じの推理小説です
バッキンガム宮殿の女王陛下の居室前でこともあろうに女王陛下自らが使用人の死体を発見
事故か自殺か他殺か病死か!?
偶然、その場に居合わせたメイドのジェインは女王陛下から事件の真相を密かに探るように命じられる
作者は大の英国王室フリークの方だそうで、女王陛下の人物像を可能な限り忠実に作中で再現しているとかで、普段はニュースとかでしか窺うことの出来ない女王陛下の意外な一面を知ることが出来ます
本作の前書きで「この小説は、バッキンガム宮殿を舞台にし、女王や王室の職員を登場させているが、全てフィクションである。主役もわき役も、また公の地位にある者もそうでない者も、女王を除くあらゆる登場人物は作者の想像の産物にすぎない。(後略)」とあるのが印象的です
作中の女王陛下像をみていると一般市民がジョークで送った結婚式の招待状を受けて出席するというお茶目な一面も理解できると思います
主人公はバッキンガム宮殿にメイドとして仕えるジェイン・ビー
本人いわく「本当はバッキンガム宮殿のメイドになんかなるつもりはなかった」「どういうわけか、もののはずみでこんなことになってしまった」とのこと
ジェインがバッキンガム宮殿のメイドに就職したきっかけは王室が出した新聞の求人広告でした
一見すると小説ゆえのトンデモフィクションのように思えますが、本作の後書きによると現実の英国王室では下級職員の募集は新聞や職業紹介所を通して募集をかけているのだとか
でもって、
>年収は1万5000ポンド(約195万円)だが、宮殿内に部屋が与えられ、3回の食事が付き、服も貸与される。10年間続けられれば、年収10万ポンド(約1300万円)も可能という。
>条件は「有能で、分別あるマナーの持ち主」。王室の機密情報に触れる機会も予想されるだけに、「秘密を守れる」という条件もある。
この辺りの条項は本作を読めば納得できるというか、ニヤリとできるというか
「10年間続けられれば。。。」ということは、裏を返せば長期間勤務を続けられる人がいないってことですよね?
あと、「有能で、分別あるマナーの持ち主」ですが、本作で主人公のジェインが女王陛下に信頼されて事件の捜査協力を依頼されるようになった理由は「ジェイン・ビー、あなたはなかなか思慮深い娘さんのようだわ。カナダ人ですものね。カナダ人は分別があるから。」だそうです
まぁ、その辺りの様々な裏事情は本作を読めば理解できるようになると思います
推理小説なので詳しい内容は伏せますが、主人公のジェインは本当にただのメイドでしかありません
特別に推理の天才とか運動神経が優れているとか特殊能力を持っているとかといったこともありません
本当にただのバッキンガム宮殿に住み込みで働くハウスメイドの一人にすぎません
女王陛下の依頼を受けてといっても、特別な権限が与えられるわけでもなく、ましてや殺人許可証が与えられるなどといったこともありません
それどころか、女王陛下と連絡を取りあっているということすら秘密にしなければいけないのです
なので、捜査といっても仕事の合間に使用人仲間たちから噂話を聞いたりするくらいで、決して女王陛下の御威光であれこれできるわけではありません
それどころか、女王陛下から「誰某に会って極秘に話を聞いてきて欲しい」との密命を受けて「えっ、その日は仕事が。。。」「わたしから貴女に配慮するように家政主任に命令できないからそこは貴女がなんとかして」「えー!?」という展開もあったりとかします
王室関連であれなんでもゴシップにする風潮のある英国で、バッキンガム宮殿内で殺人があって、女王陛下がその事件に興味を持っていて、メイドにその調査を個人的に指示していたなんてことが公になったらどうなるかは火を見るよりも明らかなわけです
そういった諸々の事情があってジェインと女王陛下との繋がりを知っているのは宮殿内でもごく一部というか、女王陛下との連絡役の世話係だけな状況です
まさに孤立無援
そんな状況で情報を集め、時に女王陛下と密談して情報の整理を行い真実を追究していくわけです
そしてラストは女王陛下が秘密裏に事件の関係者を集めて女王陛下自らが推理を披露
複雑に絡み合った人間関係と事件の真相を解明していくといった展開になります
作中では主人公のジェインの視点で物語りが進行しておりあくまでも主役はジェインですが、このときばかりは女王陛下が主役です
女王陛下の存在感が半端なくすごいです
派手なアクションや犯人と探偵の知力を尽くした頭脳勝負といった派手な要素はないですが、本格的な推理とバッキンガム宮殿と英国王室について詳しくなれるおススメの一冊です
女王陛下のこともほんの少しだけ好きになれる。。。かも?
とまぁ、本日はメイドさん目当てで買ったら、実は本格的な推理小説だったという女王陛下のメイド探偵シリーズの紹介でした
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